スローな日記

気ままに書きます(ほぼ飲み日記)

ウェブ時代をゆく

もし、本書で言う時代の大きな節目に来ているなら、この本は現代版「学問のすすめ福澤諭吉)」と言える。
梅田望夫さんのWeb上の情報や本を読んで感じるのは、主張の一貫性であり、表現の分かりやすさ。正直なところ、新しい知識として得るものが少ない本ではあるが、誰かに読ませたい気になるのは確かだ。


もちろん、細部についてはいくつか個人的にずっと気になっていることもある。
例えばGoogleの実績は素晴らしいものがあるが、思想面への評価は過剰とも感じる。
思うに、同じような思想の会社は結構多いと思うが、これが大成功に結びついていることがGoogleの特異性なのだと考えられる。20%ルールや、豪華な無料昼食や、情報を整理尽くすという理念が、言い方は悪いが偶然にも上手く組み合って現在の状況になっていると思う。つまりこれは、「成功基盤×成功確率」としての成り立ちであって特別な思想ではなく確率的に特別な存在なのだろうと。


大きな論点でもある、ポジティブな考え方をいかに行動に結びつけるか、そしてそれ、つまり「好き」をやり続けることが出来るか、現在の日本経済社会においてその障壁は大きいかも。
我々一般人が求めるのは単なる「挑戦」ではなく、「安定」の上に成り立つ挑戦である。大企業に入ることで、確率的な悩みから開放されると感じることが出来る。それでもそれを捨てて不安定さを含めた選択が本当にできるだろうか、この課題は社会的なシステムが大きく変わらないと解決されないと思う。これは本当にシリコンバレーでは解消されているのだろうか。
ただ、これまで働いてきた自分の実感から言えるのは、実際に大企業で働いた場合でもその中で評価されて出世したり、ある程度は自分の好きなことが出来たりする可能性もまた"確率"でしかなく、結局は経済的な安定感覚と引き換えに虚しい人生観を感じている。つまりは大企業勤務を推奨出来るわけでは無い。


と、まあいろいろと考えることが多い本。当然ながらこの時代、この世代にとってこの手の内容はこの時代の職業感を強く意識させるものになる。


ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)